オーナーシェフのご挨拶

「おいしかった」そのひと言と笑顔のために

「おいしかった」そのひと言と笑顔のために

変わらない朝の風景があります。それは、まだ薄暗い時間帯から始まる菓子やパンの仕込み。
ガタンとオーブンを開け閉めする音、カスタードを炊く鍋から沸き立つ湯気、
キャラメルを煮詰める甘い香り。

わずか4年半の菓子修業を経て、手探りのままスタートさせた本店ですが、信頼できる食材を届けてくれる生産者、支えてくれたスタッフ、そしてご愛顧くださったお客さまのお陰で、20周年を迎えることができました。

「おいしかった、ありがとう」。 笑顔でそう言ってくださるお客さまのために。 これからも、日々技術を磨き、手間をかけ 生産者のこだわりを感じる食材を厳選し、 千代からものづくりと食の文化を発信し続けてまいります。

2021年4月 オーナ-シェフ 進藤 比呂志

オーナーシェフ 進 藤 比呂志

進 藤 比呂志

Profile 1965年福岡県糸島市生まれ。九州大学経済学部卒業。93年、パン職人を志し、福岡市内のパン、ケーキ店で下積み生活を始める。96年、欧州の本場で洋菓子・製パンの原点を学ぼうと、スイス、フランスの洋菓子店やチョコレート店、パン店で2年間修業。

帰国後、パティスリー「ポワブリエール」(広島市)、「西鉄グランドホテル」(福岡市)で、パティシエとして勤務する。2001年独立し、本店「ラ・フェ・ブルー」(福岡市博多区千代)開業。11年カフェスペースを併設した姉妹店「ポンヌフ」(同)を開店。福岡県内の専門学校や西部ガスの料理教室などで講師を勤めている。

見習いの頃に焼いた思い出の
クロワッサン

1993年(27歳) 遅い出発。ものづくりの道を志し、パンの世界へ

九州大学を卒業後、「自分の天職は何だろう」と悩んでいた20代。自分で作ったものを自ら売るというシンプルな生き方に憧れ、陶芸や木工、天然酵母のパン作りなどに興味を持ちました。パン業界に飛び込んだのは、「お客さまの喜ぶ顔が一番そばで見えるから」。パン店「ボンジュール」さん(福岡市中央区大名、閉店)でした。「とにかく、ものをつくる仕事をしたかった」ー27歳の遅い出発でした。

フランスの天然酵母のパン店での
仕事は、薪割りから。
石釜でのパン作りの様子

フランスの菓子・チョコレート店で
パティシエ仲間と

1996年(30歳) 結果を出さねば次はない。本場欧州での菓子・パン修業

その後製菓を勉強したく「パティスリー サントノーレ」さん(東区香椎)にお世話になりました。この頃から「いつか本場でパンと洋菓子の原点に触れ、基礎から学びたい」という思いが募りました。そこへ「ボンジュール」の店主・山田さん(故人)の紹介で、スイスのパン店で働くことになりました。渡欧してまず驚いたのは、一般的なパン店がケーキやチョコレートなどの菓子も製造していたことです。これは現在の店づくりの礎となっています。

しかしスイスの修業先では苦労の連続でした。日本での経験も未熟なうえに、現地の公用語であるドイツ語は全く話せません。「もう、明日から来なくていいよ」と告げられるかもしれない環境に葛藤の日々でした。始めの1カ月は、休日も出勤して一つでも仕事を覚えよう、と必死でした。2カ月後には、担当を与えられました。3カ月目に「お前がいないと仕事が早く終わらない」と同僚に言われた時には、「やっと仲間になれたんだ」と喜びもひとしおでした。

その後、フランス・ラングドッグ地方で石釜で焼く天然酵母のパン製造を、またスイスやフランスの菓子店・チョコレート店で製菓技術を学びました。スイスに残ってこの道を究めるという選択肢もありましたが、1998年に帰国しました。

創業当時のラ・フェ・ブルー

2011年(35歳) 独立。本店「ラ・フェ・ブルー」を開業

西鉄グランドホテル(福岡市)に勤めていた頃、知り合いから独立を勧められ「ラ・フェ・ブルー」を開店しました。 店名は、童話「ピノキオ」の主題歌「星に願いを」に登場する「ラ・フェ・ブルー(青い妖精)」と、フランスの作家サン・テグジュペリの「星の王子さま」にちなんだものです。技術も経験も未熟でしたが、自分の作る商品でお金を得る苦労を初めて体験しました。

地域にちなんだ菓子が看板商品に。新しい定番商品を次々と開発

店を構えた博多区千代町の人たちは、情が深く温かい方ばかり。地域の方により親しまれ千代に根差した菓子店にしたいと、人気のフランス風シュークリームに「千代の華(か)おとこシュー」と命名。店の看板商品になりました。

片手で持って食べられる「エクレールシリーズ」は、クッキー生地で覆われたシュー生地に、濃厚なクリームがたっぷり。定番のショコラ、キャラメル、カフェ味に、季節限定の味をラインナップ。

「スリムケイクシリーズ」は、旬の素材を合わせ、濃厚でしっとりとしたパウンドケーキです。常温で持ち運べて日持ちは4日間。「細長くてお洒落」と人気を呼び店の定番商品となりました。

千代の華おとこシュー

エクレールシリーズ

スリムケイクシリーズ

焼き菓子やチョコレートをメインに
人々が憩う、パリのサロンを
イメージした内観

2011年(45歳) 地域の文化施設1階に姉妹店「ポンヌフ」を開業

本店からほど近いオフィスビル・文化施設「パピヨン24」1階に、ショコラと洋菓子サロンを開店しました。店名「ポンヌフ」は、フランス語で「新しい橋」の意味ですが、パリに現存する最古の橋でもあります。「新しい」けど昔からセーヌ川に架かるパリの「ポンヌフ」のような存在になりたい、私たちのお菓子がお客さまの心と大切な方の心をつなぐ架け橋になってほしい、との願いを込めました。 施設には演奏会や演劇ができる文化ホールがあり、当店のカフェスペースは地域の憩いの場として親しまれています。

お客様の心に残る、季節の一品を届けたい

紅玉りんごのパイ

紅玉りんごのパイ

季節のジャム作り

季節のジャム作り

紅玉りんごのパイ

ある年の夏の暮れに、一人の女性が来店されました。「亡くなった姉のために、紅玉リンゴのパイを焼いていただけませんか」。話を聞くと「1年前に他界した姉が、最後に欲しがったのがこのパイでした。このパイをみんなで囲んで故人を偲びたいのです」と。 それを聞いて私達のお菓子がそんなにも皆様の人生、暮らしに密接に関わっていることに気付かされ「ハッ」とさせられると同時に身の引き締まる思いでした。 「毎日、本気でやっているか?」改めて自分の仕事ひとつひとつを見直すきっかけになった出来事でした。

私たちの商品づくりのモットーは、「ラクをしない」こと。つまり手間暇を惜しまない、ということです。 例えば、栗が丸ごと入った「マロンパイ」に使う利平栗の渋皮煮、「ショソン」に詰める紅玉りんごのコンポートや、製菓に使う様々な種類の果物のジャム。既成の加工品を使う方法もあるのですが、ラ・フェ・ブルーは手作りしています。時間も手間もかかりますが、砂糖の量を調節することで果物本来の甘みと風味を生かすことができるからです。

これからも、選び抜いた九州の旬のフルーツや食材を使い、独自の製法で作り上げた味覚・香り・絶妙な食感のスイーツをお楽しみに頂けるよう、地域に根差した洋菓子文化の創造に努めてまいります。 ショーケースを眺めるお客さまに、にっこりと笑顔の花が咲きますように。